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労務コラム*育児休業

育児休業が中小企業でも浸透してきています。
以前であれば妊娠し育児休業すれば中小企業では少人数のため事業運営に支障をきたし、代替え要員を雇用すれば復職後は余剰人員となり、結局は退職する傾向にありました。それが、最近では中小企業でも社会的責任(CSR)の意識が高まり、法令順守はもちろんのこと、少子高齢化に向けての理解、人手不足の人材確保は新規雇用して新たに育成するよりは内在した人材の保全の方が望ましいとの考え方、また保険制度の充実、IT化の推進等により育児休業が取りやすい環境になったものと思われます。

育児休業は、原則として子が1歳に達するまで休業することができます。また特別な事情があれば最長2歳まで延長が可能になりました。期限の参考として「育児のための所定労働時間短縮措置」、「所定外労働の制限」は、子が3歳に達するとまで、「子の看護休暇」、「時間外労働の制限」、「深夜業の制限」は小学校入学の始期までになります。

子の看護休暇も2021年1月1日から「時間単位」で取得することが可能になりましたので、ご注意してください。

保険制度も充実して、妊娠により休業した日の属する月より育児休業の復職日の属する月の前月まで健康保険・厚生年金保険料が免除になります。産前産後と育児休業中は制度が異なりますのでその都度手続きが必要ですので注意してください。産前産後では給料補償の「出産手当金」、出産費用として「出産育児一時金」(直接支払制度)が支給され、育児休業中は雇用保険より「育児休業給付」が支給されます。

育児休業復職後、所定労働時間の短縮等で給料支給額が下がる場合は、「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出すれば1等級でも変更が可能で保険料を下げることができますし、「養育期間標準報酬月額特例申出書」の手続きをすれば、保険料は下がりますが、歳をとり老齢厚生年金を受給する場合に、養育期間前の標準報酬月額で計算され年金額が有利に取り扱われます。

さらに育児休業を活用するために2021年6月に育児・介護休業法が改正され2022年4月から順次施行される予定です。改正内容は、①男性の育児休業取得促進のために子の出産後8週間以内に4週間まで育児休業が取得できる枠組みの創設および2回まで分割取得できる制度にすること、②育児休業を取得しやすい雇用関係整備および妊娠・出産の申出をした従業員に対する個別の周知・意思確認の措置の義務化、③育児休業の2回まで分割取得できること、④常時労働者1,000人超の事業主に対して育児休業取得状況公表の義務化、⑤有期雇用従業員の育児休業・介護休業の取得要件緩和、⑥雇用保険における育児休業給付に関する所定要件の規定整備などです。②および⑤は2022年4月1日施行、④は2023年4月1日に施行は決まっていますが、その他の施行日は現在未定です。

2017年1月1日に男女雇用機会均等法が改正施行され、「妊娠・出産等に関するハラスメント(マタハラ)の防止措置」も義務化になっていますので、ご注意してください。