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労務コラム*パワハラ

2019年5月29日に成立し、2020年に大企業を対象に施行しています改正労働施策推進法の「パワーハラスメント防止措置の義務化」がいよいよ2022年4月より中小企業も努力義務から義務化に移行する予定です。

会社が講じるべき措置は

  1. 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
  2. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制整備
  3. 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
  4. 併せて講じるべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)

です。具体的には

  1. ハラスメント相談窓口の設置(外部でも可。弊所でも対応しています)
  2. 相談があったときの具体的な手順・方法の確立
  3. 就業規則等への記
  4. ハラスメント研修の実施

などが、考えられます。

厚生労働省発表の令和2年度「職場のハラスメントに関する実態調査報」の報告書によれば過去3年間の相談件数では、高い順にパワハラ(48.2%)、セクハラ(29.8%)、顧客等からの著しい迷惑行為(19.5%)、妊娠・出産・育児休業等ハラスメント(5.2%)、介護休業等ハラスメント(1.4%)、就活等セクハラ(0.5%)となっています。

ハラスメント該当事案の内容は、パワハラでは「精神的な攻撃」、セクハラでは「性的な冗談やからかい」、妊娠・出産・育児休業等ハラスメントでは「上司が制度等の利用の請求や制度等の利用を阻害する言動」、顧客等からの著しい迷惑行為では「長時間の拘束や同じ内容を繰り返す等の過度のクレーム」、介護休業等ハラスメントでは「上司が制度等の利用の請求や制度等の利用を阻害する言動」、就活等セクハラでは、「食事やデートへの執拗な誘い」の割合が最も高かった。

行為者と被害者の雇用形態/関係では、パワハラ、セクハラ、妊娠・出産・育児休業等ハラスメント、介護等ハラスメントのいずれにおいても雇用形態では「正社員から正社員へ」、関係は「上司(役員以外)から部下へ」の割合が高かった。

ハラスメントを受けた後の行動として、パワハラ、セクハラでは「特に何もしなかった」の割合が高かった。一方、顧客等からの著しい迷惑行為では「社内の上司に相談した」「社内の同僚に相談した」の割合が高かった。

ハラスメントを知った後の勤務先の対応では、パワハラでは「特に何もしなかった」、セクハラでは「あなたの要望を聞いたり、問題を解決するために相談にのってくれた」、顧客等からの著しい迷惑行為では「あなたの要望を聞いたり、問題を解決するために相談にのってくれた」の割合が高かった。勤務先はパワハラの「特に何もしなかった」ことはパワハラの認識・知識が薄いのでしょうか?

ハラスメント事案は、同時に被害者が精神疾患に罹患するリスクを含んでいます。会社として十分な措置はもちろんですが、ハラスメントが起きない職場環境を整備することが最も重要なことです。中小企業でも法律の施行を機に万全な対策を講じることを期待します。