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労働基準法の基礎

労働基準法の基礎知識についてご案内いたします。

会社経営の労働基準法基礎知識

正社員・アルバイトに関わらず人を雇用した場合、その一般的最低ルールが「労働基準法」によりさだめられています。

 

労働時間について

原則として休憩時間を除き1日8時間、1週40時間を超えて働かせることはできません。
その対処方法は次のとおりです。

  • 時間外労働について労使協定を結び労働基準監督署に届出
  • 変形労働時間制にする(1ヶ月単位制・フレックスタイム制・1年単位制・1週間非定型制)

1年・1週間制は労働基準監督署に届出

  • 適用除外者(管理監督者、機密事務担当者、監視断続労働者で許可を受けた者)
  • 事業場外のみなし労働時間制
  • 専門業務型・企画業務型裁量労働時間制

休日について

原則として1週1日の休日を与えればOKです。祝日を休ませなければならないわけではありません。 それでもどうしてもその日に出勤してもらわなければならないときは、

  • 休日労働について労使協定を結び労働基準監督署に届出
  • 振替休日にする(就業規則の明記が必要です)*代休と違います

時間外労働・休日労働等の割増賃金

1日8時間・1週40時間を超え、又は休日に働かせた場合、いくらの割増時間給が必要でしょうか?

通常残業 2割5分増以上
通常深夜勤務 2割5分増以上
残業としての深夜勤務 5割増以上(通常残業+通常深夜勤務)
法定休日 3割5分増以上
法定以外の休日 2割5分増以上
休日の残業 該当休日と同じ(法定休日又は法定以外休日)
休日の深夜 ・法定休日:6割増以上(法定休日+通常深夜勤務)
・法定以外の休日:5割増以上(法定休日以外+通常深夜勤務)

では、割増賃金は何を基礎に計算すればいいのでしょうか?
法律においては「・・・を基礎にして計算」という条文ではなく、「計算の基礎にしないのは・・・」と規定されており、その賃金は次のとおりです。(但し、基礎にしても可です)

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

具体的には、
月給プラス手当の場合
(月給+基礎手当)÷(一月の出勤日数×一日の就業時間)=時間単価×割増率
管理監督者等割増手当の支給対象者以外の年俸者にも割増賃金は必要です。

給与について

給与の支払には法の5原則があり、また例外は次のとおりです。

通貨支払

法令もしくは労働協約で定めがある場合は可 労働者の同意を得た場合は指定銀行等への振込は可

直接支払

代理人・譲受人への支払は違法であるが、使者には可

全額支払

  • 法令の定めがある場合は可
  • 労使協定がある場合は可
  • 毎月1回以上支払
  • 定期間を定めて支払

通勤手当のかわりに定期券を購入支給しているケースがあります。労働組合がない場合、または労働協約を締結していない場合は、通貨支払の規定に抵触し違法です。

有給休暇について

経営者とお話をする機会が多いのですが「うちには有給休暇などない」「有給休暇など与えるほど余裕はない」と稀に耳にします。
それでいいのでしょうか?

法律においては、「6ヵ月継続勤務し全労働日の8割以上出勤した従業員には10労働日の有給休暇をあたえなければならない」と規定されています。以下は勤続年数により次のとおりです。

  • 1年6ヶ月  11日
  • 2年6ヶ月  12日
  • 3年6ヶ月  14日
  • 4年6ヶ月  16日
  • 5年6ヶ月  18日
  • 6年6ヶ月  20日(上限)

これは出勤率8割以上を原則としており、8割未満の従業員には与える必要はありません。
上記の日数は法的義務ですので、もちろんこれ以上与えても可です。
また、有給休暇の有効期間は2年間です。

解雇について

法第18条の2に「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」
平成16年1月より条文として明文化されたものであるが、以前は次のような手続き的な条文のみであった。
「従業員を解雇しようとするときは少なくとも30日前にはその予告としなければならず、30日前に予告をしないときは30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」
また次の従業員は解雇できない。(解除条件あり)

  • 労災で休業している期間及びその後30日間
  • 女性従業員が法的な産休で休業している期間及びその後30日間

解雇には「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」、類似(要件により解雇)として「雇止め」「退職勧奨」などがありますが、近年、個別労働紛争としてトラブル原因の上位にランキングされており、今後も増えることが予想されます。
充分なる対策を講じてください。

労働基準法には上記以外にもさまざまな内容(法的制限等)があります。一度、ご確認又は専門家にご相談してみてください。

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