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労務コラム*副業・兼業(ダブルワーク)について~労働時間・保険関係編~

こんにちは!社会保険労務士伊原毅事務所です。
今回は、今年の7月にガイドラインが改定をされた副業・兼業(ダブルワーク)についてです。
近年、副業・兼業を希望する労働者が増えてきており、今年経団連が発表した「副業・兼業に関するアンケート調査結果」によると 従業員5,000人以上の企業について副業・兼業を認める又は認める予定であるという企業は89.3%にものぼったとのことです。
労働者が多様なキャリア形成を図っていくため、今後さらに副業・兼業制度の整備のニーズは高まり、企業においても新たな制度設計が必要になってくるのではないでしょうか。
そこで今回は、副業・兼業の導入編とのことで、副業・兼業をする際の基本的な知識について確認をしていこうと思います!
「時間管理はどうなるの?」「社会保険料はかわってくるの?」「雇用保険は?」等の事項について
①労働時間②労災保険③社会保険④雇用保険についてチェックしていきます。

01.労働時間

原則、労働時間の通算が必要になります。
ただし、労働基準法が適用されない場合(フリーランス、理事、監事等)又は、労働基準法が適用されるが労働時間規制が適用されない場合(農業・畜産業・管理監督者・高度プロフェッショナル制度等)は通算の必要はありません。

-1- 通算方法

A社
平成17年4月1日入社 
所定労働:9:00~18:00 (休憩1時間)

B社
令和4年4月1日入社
所定労働:19:00~21:00

今回は、A社、B社とも出勤日は同じ、変形労働時間制等使用していないシンプルなパターンで考えます。
A社では、労働時間8時間、B社では、労働時間3時間となり、通算すると1日あたり8時間+3時間=11時間
労働基準法の法定労働時間は1日8時間なので、11時間-8時間=3時間分が時間外労働になります。
では、この場合はどのように時間外を計算すればよいのでしょうか。
原則は、時間的に後から労働契約を締結した使用者における時間外労働となります。
つまり、この場合は、B社の時間外労働として割増賃金を計算し、B社との間で36協定を結ぶ必要がでてきます。

 

02.労災保険

労働者として雇われている場合は副業・兼業先すべてにおいて労災保険に加入する必要があります。
実際に副業・兼業をされている方が労災に遭われた場合、給付額はすべての勤務先の賃金額を合算した額になります。労災の発生事業場以外であっても対応が必要になってくる場合がありますので注意が必要です。
労災給付については、複数事業労働者への労災保険給付(パンフレット)をご確認ください。

03.社会保険

まず社会保険の被保険者要件から確認です。社会保険の適用事業所に雇用されていれば、法人、役員、正社員等全員が社会保険の被保険者となります。
ここで例外ととしてパートタイマー、アルバイトの方は、1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の業務に従事している正社員

の4分の3以上である方は加入対象となり、現在従業員101人以上の企業では以下の条件をすべて満たせば加入対象となります。
①週の所定労働時間20時間以上30時間未満
②月額賃金8.8万円以上
③2ヶ月を超える雇用見込みがある
④学生ではない
では本題の副業・兼業の社会保険の適用の取り扱いについて考えていきます。
社会保険での適用については、事業所毎に判断をします。
つまり、同時に複数の事業所で就労している方が、それぞれの事業所で要件を満たす場合は両事業所について適用されますし、
逆にいずれの事業所においても要件を満たさない場合は、労働時間等を合算して要件を満たしたとしても、適用されません。
では、両事業所にて社会保険の被保険者要件を満たす場合、保険料や手続きはどのように行うのでしょうか。

【例】     今回は、上記【例】を参考に考えていきます!

-1- 手続き方法

①被保険者が主たる事業所を選択して管轄する年金事務所及び医療保険者(〇〇健康保険組合・協会けんぽ等)を選択します
②選択をする事業所の所在地を管轄する事務センター(年金事務所)へ健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択/二以上事業所勤務届を提出し、またその選択する事業所が健康保険組合に加入している場合は、健康保険組合へ所定の用紙を提出します。※協会けんぽの場合は、事務センターのみでOK

-2- 保険料

①それぞれの事業所の報酬を合算していきます。
A社10万円+B社20万円=30万円
この30万円をもとに標準報酬月額を求め、保険料額を決定します。
ちなみに現在、健康保険料は各都道府県によって(健康保険組合に加入している方は、それぞれの健康保険組合によって)料率が異なっています。
つまり、A社、B社で都道府県が異なる場合や、健康保険組合に加入している場合等、A社、B社どちらを選択するかによって料率も異なってくるわけですね。

②保険料は、各社報酬の額により按分した金額を選択した年金事務所(今回は、▲▲年金事務所)へ納付していきます。
A社の場合は、保険料×10/30  B社の場合は、保険料×20/30 を負担していくことになります。

04.雇用保険

まず雇用保険の加入要件から確認です。ここでも会社に労働者として雇われていないフリーランスの方などは加入対象外となりますが、
原則①、②いずれも条件を満たす場合は、雇用保険の被保険者となります。
①1週間の所定労働時間が20時間以上
②継続して31日以上雇用されることが見込まれる者
では、複数の会社で勤務をし、どの会社でも上記条件を満たす場合の雇用保険の加入の取り扱いはどのようのになるのでしょうか。
この場合は、社会保険とは異なり、被保険者の要件をすべての事業所で満たしていたとしても、加入するのは主たる賃金をうける事業所1つ

のみということになります。
但し、65歳以上の方については、マルチジョブフォルダー制度という制度が、2022年1月よりスタートし、
1つの事業所で通常の雇用保険の加入要件を満たしていなくとも雇用保険の被保険者(マルチ高齢被保険者)となることができる場合があります。

具体的には、本人の申出によるのですが、下記要件に該当した場合は、マルチ高齢被保険者となることができるようになります。
①複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
②2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計が1週間の所定労働時間が20時間以上であること
③2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること
会社は、本人からの依頼に基づき、手続きに必要な証明を行う必要や、マルチ高年齢被保険者の資格を取得した日から雇用保険料の納付義務が発生します。

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