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平成24年5月号
2012年12月27日 20時00分
最近の労働関係の地裁裁判例から
◆自動車メーカーによる雇止め等(4月16日判決)
自動車メーカーが行った雇止めや派遣切りは無効であるとして、工場で働いていた元期間従業員(4人)と元派遣社員(3人)が雇用継続の確認を求めていましたが、東京地裁はこれらの請求を棄却しました。ただし、元期間従業員がカットされた未払い賃金(1人約58万~63万円)の支払いは命じました。
自動車メーカーでは、契約打切りに応じなかった期間従業員に「契約期間終了までの休業」と「約4割の賃金カット」を2008年12月に言い渡して翌年4月で雇止めとし、派遣社員は派遣元から2008年12月に解雇されていました。
裁判長は「不況に伴う雇止め・派遣切りは合理的である」と判断しました。
◆銀行におけるパワハラ(4月19日判決)
パワハラ被害により退職せざるを得なくなったとして、50代の社員が銀行と上司に対して損害賠償(約4,900万円)を求めていましたが、岡山地裁は社員の精神的苦痛を認め、慰謝料など110万円の支払いを命じました。
2007年3月頃、仕事上でミスをした社員に対して「辞めてしまえ!」などと当時の上司が強い言動で叱責するなどし、この社員は2009年に辞表を提出して退職しました。
裁判官は「上司の叱責は病気療養から復帰直後の社員にとって精神的に厳しく、パワハラに該当する」と認定しました。
◆過労による高校教諭の死亡(4月23日判決)
高校教諭の男性が修学旅行の引率からの帰宅途中に急性心筋梗塞を発症して死亡したのは過労が原因であるにもかかわらず、公務災害と認定されなかったとして、遺族である妻が「地方公務員災害補償基金」に対して不認定処分の取消しを求めていましたが、東京地裁は公務と死亡との因果関係を認め、上記処分を取り消しました。
裁判長は、死亡するまでの1週間の間の労働時間が法定の2.5倍以上に及んでいたと認定し、「日常の勤務と比べて質・量ともに特に過重だった」と判断しました。
「職場のパワーハラスメント」の予防・解決
◆厚労省ワーキング・グループが取りまとめ
厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」においては、職場の「いじめ・嫌がらせ」、「パワーハラスメント」(パワハラ)について昨年7月から議論されてきましたが、このたび、問題の予防・解決に向けた提言を取りまとめ、発表されました。
◆企業の積極的な取組みが必要
職場の「いじめ・嫌がらせ」、「パワハラ」は、労働者の尊厳や人格を侵害する許されない行為であり、早急に予防や解決に取り組むことが必要な課題です。
企業は、これらの発生による「職場の生産性の低下」や「人材の流出」といった損失を防ぐとともに、労働者の仕事に対する意欲を向上させ、職場の活力を増すために、この問題に積極的に取り組むことが求められます。
◆職場のパワハラをなくすために必要なこと
(1)企業や労働組合、そして一人ひとりの取組み
企業や労働組合は、職場のパワハラの概念・行為類型やワーキング・グループ報告が示した取組例を参考に取り組んでいくとともに、組織の取組みが形だけのものにならないよう、職場の一人ひとりにも、それぞれの立場から取り組むことを求めることが必要です。
(2)トップマネジメントへの期待
職場のパワハラは組織の活力を削ぐものであることを意識し、こうした問題が生じない組織文化を育てていくことを求めることが必要です。そのためには自らが模範を示しながら、その姿勢を明確に示すなどの取組みを行う必要があります。
(3)上司の立場にある方への期待
自らがパワハラをしないことはもちろん、部下にもさせないように職場を管理し、職場で起こってしまった場合はその解決に取り組む必要があります。
(4)職場の一人ひとりへの期待
互いの価値観などの違いを認め、互いを受け止め、人格を尊重し合い、互いに理解し協力し合うため、適切にコミュニケーションを行うように努力することが必要で。また、パワハラを受けた人を孤立させず声を掛け合うなど、互いに支え合うことを求めることも必要です。

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