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平成23年7・8月号
2012年12月27日 19時56分
労使トラブル増加と解決の仕組み
◆労使トラブルは増加傾向
厳しい経済情勢を背景に、企業と従業員が雇用契約などをめぐってトラブルになるケースが増えています。
短期解決に役立つ仕組みなど、押さえておきたい項目をまとめました。
◆「労働審判制度」とは?
これは2006年から始まった制度で、民間から選ばれた労働審判員2人と裁判官で構成される労働審判委員会が調停(話合い解決)を試み、まとまらなければ労働審判を下します。
審判に異議がなければ確定となり、異議があれば通常の訴訟に移行します。調停や確定した審判は裁判上の和解と同じ効力があり、強制執行も可能です。
通常の裁判は長期化しがちですが、労働審判は「原則3回以内」で審理を終えるため、平均審理期間は74日と短期間です。
◆個人での争いが増加傾向
厚生労働省の出先機関である都道府県労働局や労働基準監督署で無料相談ができる「総合労働相談コーナー」も便利です。
ここでは企業への助言・指導や、紛争調整委員会によるあっせんができますが、労働審判のように、あっせんに応じさせる強制力はありません。法令違反などの疑いがあれば、労働基準監督署が会社に対して指導を行います。
2010年度の相談件数のうち、民事上の個別労働紛争の相談は24万6,907件と過去最高だった前年度と同水準でした。組合の組織率低下などを背景に、働く人が個人で経営者側と向き合う状況が増えているためのようです。
◆トラブルが起きないことが一番
会社が残業代を法律通りに支給していなかった場合などで、労働審判などを通じ、突如数百万円規模の支払いが必要になるケースも見られます。
もちろん、トラブルが起きないことが一番ですが、トラブルが起きてしまった場合の対応を考えておく必要もあります。
セクハラによる労災の認定基準が緩和へ
◆「心理的負担」を重く評価
職場でのセクハラにより発症したうつ病などの精神障害の労災認定について、専門家でつくる厚生労働省の分科会は、新たな認定基準の案をまとめました。
直接的なセクハラについては被害者の心理的負担が重く評価され、労災認定されやすくなります。厚生労働省では、年内にも都道府県の労働局に通知をする予定です。
◆労災の認定基準とは?
精神障害の労災認定は、その原因となった職場の出来事を心理的負担が強い順に「3」~「1」の段階で評価したうえで、個々の事情も勘案して判断しています。
現在、セクハラについては原則として中間の「2」とされ、特別の事情があれば労働基準監督署の判断で「3」に修正可能ですが、判断基準は「セクハラの内容、程度」とあるだけで、修正例は少ないようです。
◆セクハラによる労災の新基準
新基準では、どのようなセクハラなら「3」や「1」に修正されるかの例示を行っています。
「3」に修正される具体例として、「強姦や本人の意思を抑圧してのわいせつ行為」、「胸など身体への接触が継続した」、「接触は単発だが、会社に相談しても対応・改善されない」、「言葉によるセクハラが人格を否定するような内容を含み、かつ継続した」などの事例を挙げ、該当すれば「3」と判定すべきとしました。
この他、長期的に繰り返されるセクハラ行為が少なくないことから、対象疾病の評価期間を、従来の「発症前6カ月」よりも前の部分も評価する等の意見も盛り込まれています。
◆今後の影響
今後、基準が変われば心理的負担がより重く見られ、労災が認定されやすくなると思われます。会社としても、就業規則にセクハラ防止規定を設けるなど、これまで以上の対策が求められます。

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